今さえ良ければよいと思いがちですが

「時間割引」という心理学の考え方が面白い(2016.6.6)

 土曜日の毎日新聞朝刊に「土記」というコラムがあり、そこに「増税延期と心の関係」という面白い記事がまとめられていました。

 ダイエットが難しいのは「時間割引」という心理学的な心の特徴があるからだという事です。「へえ〜」と思いつつ、この目新しい用語について調べてみると、「大阪大学」のページに詳しく書かれていました。

 基本的には「すぐにもらえる小さい報酬」と「将来にもらえる大きい報酬」のどちらを選ぶかという選択をするときの心の動きを扱った学問のようで、当然ながら前者を選ぶ人が多いようです。

 特にこのページで面白いなと思ったのは、人は得られる報酬が「たくさん」あり、それが「確かな」ものであり、なおかつ「すぐに」得られるほど価値を大きく感じるとのことです。

 当たり前と言ってしまえばそれまでですが、これが多く人の行動原理になっていると考えると、冒頭に書いたような、ダイエットがうまくいかない理由も、こういった心理の動きに左右されていると言えそうです。

 つまり報酬が少なく、不確実で、結果がかなり先に表れるようなダイエットというのは難しいという事です。(だからテレビではすぐに効果が表れるダイエットという番組が多いような気もします)

 これを家計に応用すると、日々わずかな積み立てを何年間も行うという事は、報酬は多いかもしれませんが、ず〜っと積み立てられるかどうか不安があり、さらに満期になるまで何十年もかかると考えると、やる気が起きないという事なのだと思います。

 ということは、これは人生全般に応用できることであり、40代で将来の年金暮らしを予想すると、年金はどうやら少なそうだと思え、しかも年金財政が危ういらしいので「本当にもらえるのか」という不信を感じ、なおかつそのことが何十年も先であることを考えると、漠然とした不安だけが先行するものの、それに対する積み立て等の対策はやる気が起きないという事になりそうです。

 結局大多数の方は、将来より今を大事にするという事で、つい無駄遣いをしてしまったり、食べ過ぎてしまったり、飲みすぎてしまったり、遊びすぎてしまうというのは、ある意味人間の根本的な心理の影響であるとも言えそうです。

 そんな中、ある程度冷静に将来を見つめ、客観的な判断を行い、実際にそれを実行できる人が、結果的に将来の大きな果実を得ることができるという事なのかもしれません。

 当然ながら今さえ良ければと考える人が多いわけで、心理学的にはこういった人は高齢の男性に多いとのことです。どうやらいわゆる逃げ切り世代と一致しているわけで、消費増税延期も、延期されれば自分たちは負担しなくて済むという高齢者への人気取りになっているような気がします。 


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