数値に振り回されないように

家計調査の数値の信頼度(2016.8.13)

 ヤフーのニュースを見ていたら、老後資金は2700万円不足。そこでこういった計画で資金を準備しよう、というような趣旨の記事が出ていました。

 記事のベースになった数値は金融広報中央委員会という団体が調査したもので18〜79歳の個人2万5千人を対象にしたと書かれています。

 不足する資金の計算方法は実に簡単。平均的な年金収入と上記調査による支出を比べ、さらに老後は長寿社会を反映させて95歳まで生き延びるという前提のようです。

 これによれは、年金以外に2700万円+介護費用が必要になる、と書かれています。まあだいたいこういった老後資金はいくら必要かという主旨の議論やニュースでは、3000万前後と言うのが定番のようです。

 しかし前にも書きましたが、こういったことが常に話題になるのは、実際問題それだけの資金を用意できる家庭が少ないということも表しているように思います。

 つまり記事の内容を鵜呑みにして、突然これまでためてきた貯金を取り崩してお勧めの投資信託を購入するとか、保険を解約して定期預金にするとか、といったことは実に危険ではないかと思っています。

 人に言われるままにお金を動かしていたら、動かすたびに手数料が発生しますから、基本的にどんどん原資は減少するはずです。

 そんなことを考えつつ、今日はそれとは別に違った視点で、この問題を考えてみたいと思うのですが、先ず上に書いた数値の中で気になったのが、資料とした人数がたったの2万5千人であること。

 これは総務省の家計調査でも似たような問題を指摘されているようですが、要するに統計値として発表するには少なすぎるのではないかという疑問が一つ。

 例えば上記の18〜79歳という年齢幅を20代、70代と考えると各世代の人数は4000人程度になってしまいます。その4000人の数値を根拠にして老後の必要金額を算出するのは、誤差が大きいような気がします。

 もう1点。どのような調査が行われたか書いてないので、結果として集計される数値の信頼性が不明。基本的には家計簿を基にするのかなと思いますが、どれだけの人が真剣に細かく金額を記載しているか?

 さらには調査期間がどのくらいあったのか?数か月の調査では、年間で支出する項目もあり、実態はつかみにくいのではと思います。

 そしてもう1点。このことが私は気になっています。すなわち、そもそも家計調査の対象になって協力しても良いよと答えられるような世帯の家計収支は比較的安定しているのではという疑念です。

 つまり自分の家の赤裸々な実態が数字に反映されるわけで、多くの家庭ではそれを外部に漏らすのは嫌だと思うのではないでしょうか。逆に言えば、外部に出しても恥ずかしくない家計が公開されているわけで、当然ながら収入も支出も実態より多いのではないかという気がします。

 そういった背景がある数値を基にして3000万足りないぞ、と脅されることが多いような気がします。もちろんないよりあった方が良いわけで、一概に記事の内容を否定するわけではありませんが、その数値だけを信じて振り回されるのも考え物だと思っています。


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