上がった株は下がる

損切り

 上り調子だった株価
が、いつのまにか下降に転じ、じわじわと下がってきます。しかも下がる中で、当然のごとく急に上がったりします。

 「なんだ、下がってたのに反発して上がっているじゃないか。これは持ち直しだな」と自分に都合の良い解釈をして、持ち続けます。するとその気持ちを見透かしたように、再びじりじりと下がってきます。

 「おいおいそれはないだろう。一時期は10%以上上がったじゃないか。今売ればそりゃ5%ぐらい利益は出るけど、高値に較べたら明らかに損だ。そうだそうだ、あの価格まで上がったんだから、また上がるに違いない」と自分自身を説得して持ち続けます。

 読んでいただければ分かるように、要するに自分に都合の良い解釈ばかりしています。しかも高値に目が行き、すでに売り時を逃しつつあるのですが、それでも「また上がるに違いない」という妙な確信を持って、推移を見守ります。

 新聞の株価欄を見て一喜一憂し、雑誌の銘柄情報を見て、「やっぱりあれを買っておけば良かった」と悔やみ、チャートを見て、ここで反転すればどうたらこうたら、といっぱしの投資家気取りで悩みますが、株価は意に反して下降を続けます。そしてやがて買値を割り込みます。

 株価が買値を割り込むと「う〜ん、やっぱり株は難しい。この時点でいったん売るか。それとも持ち続けるか」と再び悩むことになりますが、すぐに内なる声が「あれほど上がった株が、こんなに早く下がるわけがない。ここで売って手数料を取られるより、持ち続ければまたすぐに上がってくるのでは?」と囁きます。

 「売るか、持ち続けるか」だらだらと自問自答を続けていると、株価はさらに下落。ついには買値からマイナスに転じ、売れば赤字という現実に直面します。

 「あ〜あ、やっぱりダメか。素人が株に手を出してそんなに簡単に儲かるわけないな」と、今までの強気はどこへやら、徐々に諦めの気持ちが芽生えてきます。株価も低迷を続け、買値から10〜20%落ち込んでいきます。

 さらに全体の株価の指標である日経平均やTOPIXを見ても、日本の景気全体が落ち込んでいることが見えてきます。

「これじゃあ先の展望はあまりないな。いくら持っていてももう上がらんだろう。損きりも投資にはつきものだ」と思い初め、株の雑誌等を読むと、今度は暗いニュースばっかり目に付くようになり、ここで損切りすれば被害は少ないという文章に好感を覚えるようになります。

 それでもぐずぐずと持ち続けます。やがて他の株が上がっていくような時期が来ても、自分の持ち株はちっとも上がっていないように見えます。

 「ここは我慢だ。この時期を過ぎれば一気に反転上昇だ」と思うものの、会社四季報の業績を見ると、「業績不透明」とか「回復はまだ」とか悲しい文字が目に付き、実際に業績の数値を見ると、情けない数字が並んでいます。

 結局、他の株が上がって、自分の持ち株が上がらないことに業を煮やし、「ここで売って他の株に乗り換えればいいんじゃないか」という悪魔のささやきが聞こえてきます。

 そして初めての投資だからしょうがないか、と数年後に自分自身を納得させ売却。結局最初に買った株は、10数%上昇しながら持ち続け、最後には恥ずかしながら20%ほどマイナスで売却。

 良い勉強になったはずですが、その後も上記のような心理状態が繰り返されます。


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