10分間に仕事が集中します

朝の10分間で生徒の動向を把握(2012.9.21)

 生徒と教員の日頃からの信頼関係の構築というのは言葉では簡単ですが、実際にはひじょうに難しいです。

 1クラスの生徒の人数が10〜20人ぐらいだったら、教員もかなり気くばりが出来ますから、話し好きまたは世話好きな教員なら、割とすぐに信頼関係は構築できると思います。

 しかし相手は30〜40人います。その生徒達全員に対して、同じ価値観で平等に接することが出来るかというと、これはほとんど不可能です。教員だって人間ですから多少は相性があります。

 それでも基本的には真面目な方が多いですから、日頃から何とか少しでも生徒とコミュニケーションを取りたいと思っている先生方も多くいます。ところが、では実際にどの程度生徒と接する時間があるのかと言うと、これが年々減っています。

 特に中学、高校の場合は、教員は専門で別れますので、小学校と違い、個々の生徒と話をする時間は、ひじょうに少ないです。

 ベテランの教員はその辺が分かっているので、朝や昼休み、帰りの清掃指導などでアンテナを高くして、生徒と雑談をしたり、一緒に掃除をしながら、さりげなく「最近どう?」なんて話しかけたりします。

 ところが、例えば普通の担任は朝クラスに出向いて、その日の連絡事項を伝える時間がありますが、これがだいたい10分間です。受験校では生徒はしっかりしていますので、割に落ち着いて連絡が出来ますが、その分生徒同士の連絡事項も多くなります。

 一方教員は1時間目に授業があったりすると、連絡を終えたらすぐに職員室に戻って授業の準備を始めなくてはなりませんので、場合によっては走って戻ります。

 (最近は学力低下問題が叫ばれて、授業時間確保という観点から、授業開始時のチャイムと共に授業を始めないといけない、という雰囲気ができています)

 指導困難校では、先ず廊下にいる生徒を教室に入れ、次に自分の席に座らせ出席をとるまでに数分かかります。

 その後連絡をするのですが、生徒同士で話をしていたり、場合によっては朝食代わりのパンを食べている生徒がいたり、朝から眠くて机に突っ伏している生徒がいたり、突然「先生トイレ!」と言って教室を出ていったり、それこそいじめに該当するようなからかいを行っていたりするグループがあったりしますので、連絡がなかなか行き渡りません。

 当然時間がかかりますので、これまた1時間目の授業に間に合わないと思うと、最後は適当にはしょって連絡終わりとなり、そのまま走って職員室に戻ります。

 正直なところ、この10分間に、教員は聖徳太子のような能力を求められ、連絡が終わっても、集めるものがあったり、配るものがあったりすると、とても生徒の動向を把握するなんて悠長なことは言ってられません。

 連絡終わった瞬間に、教卓の左側から「先生、腹痛いから保健室に行きます」と言ってくる生徒がいたかと思うと、右からはほぼ同時に「先生、このプリントできたけどどの先生に提出すればいいか分からない」と質問され、さらに前からは「先生、昨日アルバイト先の店長さんに怒られちゃったんだ」と言ってきます。

 しかしそうやって話しかけてくるときはまだいいです。そのうちこの担任は生徒の話を聞いてくれない、という認識が出来るとだれも話かけてこなくなります。それを狙って生徒をいっさい無視する教員がいることも事実です。

 たった10分ですが、そこで自分が担任しているクラスの生徒の動向をどのくらい把握できるか、というのがある意味担任の力量になるわけですが、新卒の先生はそれが下手な分、若さとやる気でカバーし、ベテランはそれまでの経験を生かしてさりげなく合間を縫って動向を把握する、と言うことになるようです。

  
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