年齢構成の偏りで仕事の負担が急増

教員の忙しさの現状(2012.9.25)

 あまりこのサイトで「いじめ」問題ばかり取り上げていてもしょうがないのですが、基本的に「早期発見」「早期対策」が一番効果があることは間違いないようです。

 さまざまな事件が起きて、対策が後手後手に回っていると、「一生懸命指導したのに結果的に駄目でした」ということになりがちですが、これも当初の迅速な動きができるかどうかに左右されると思っています。

 そこで昨日の話の続きですが、年寄りが多くなった教員集団ですが、ここにきて団塊の世代が大量に退職し、一時的に年寄りが減っています。

 ところが老齢年金の繰り下げ受給が決まり、希望する教員は60歳以降でも、パートや非常勤の形で勤務が出来る制度が出来ています。(再任用制度といいます)

 この方達は週に2日とか3日とか勤務しますが、当然ながら係分担の要職には付くことが出来ません。

 また再任用された人たちの気持ちとして、自分たちは第一線を退いたのだから、積極的に校務に拘わる必要はない、または拘われないという意識があります。

 つまり学校にいても、校務運営の力にはならず、教科指導だけが職務の中心となると言う状況です。

 一方大量の正規教員が抜けたわけですから、当然大量の優秀な若手教員が補充されることによって教育水準が維持できるわけですが、それが20年来続く不況により、教育にかける予算や公務員そのものの予算(給料)を減らそうと言う動きが強くなり、新たに採用される教員が、必ずしも正規教員とは限らなくなりました。

 つまり私のような非常勤講師で授業の端数を埋めるのはもちろんですが、フルタイムの勤務であっても契約は1年限りという、いわゆる常勤講師という教員が増えているということです。

 生徒からの見かけ上は通常の教員とまったく変わりませんが、実態は1年経ったら学校を変わってしまう教員が増えていることになります。

 となると、当然この方達にも、3年5年先を見越した学校運営の係を任せることは出来ません。

 結局団塊の世代が抜け、係分担が手薄になり、さらに新しく補充される教員も常勤講師が増え、既存の正規教員の係分担の負担が増えるという構造になっています。

 しかもIT化の名の下に、現在教員はその出張や年休その他の事務的な含むに関する書類はすべてコンピュータ処理となり、それ以外にも成績処理や通知表、、指導要録、内申書、というものもコンピューターで書くようになっています。

 よく医療現場で、医師が患者を診ず、コンピューターの画面を見て診断結果を患者に告げ、これが非人間的だというような指摘を受けています。

 学校現場でも休み時間になると教員は常にコンピュータ画面を見つめ、教員同士の交流もなく、一部の正規教員に仕事が集中するという現象が起きています。

 その上更に、最近は年度ごとに目標を作り、その達成度を管理職に報告し評価を受け、また一部の学校では生徒からも授業内容について評価を受け、それを管理職が見て人事に反映させると言うようなことも行われていますから、忙しいだけで生徒の立場に立った教育が出来にくい環境になっています。

 つまり正規に採用された教員の負担が年々重くなっているわけで、私の感触では、正直なところ日本の教育現場全体の力量がジリジリ下がっているように思えます。

 そこへ持ってきて家庭内暴力や育児放棄、幼児虐待という家庭的な問題も出てきていますから、大袈裟ですが、「この先日本はどうなるんだ」という不安を強く感じています。  

   
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