騒音と下降気流

オスプレイ ハワイでは訓練飛行中止(2012.8.23)

 今日の毎日新聞1面で、「オスプレイ ハワイも訓練中止」という記事が出ています。

 内容は、ハワイのカネオヘ基地(オアフ島のワイキキビーチから見て北側20kmあたりの基地で、オバマ大統領がハワイを訪問するときよく利用しています)に配備する予定だったオスプレイですが、訓練飛行をお隣のモロカイ島や、ハワイ諸島で最も大きいハワイ島で行う予定でしたが、住民の反対で中止にになっていたようです。

 中止の理由ですが、米国立公園指定の歴史的遺跡に対する影響や、騒音被害を懸念する意見があったということです。

 さらに中止決定書の内容ですが、「オスプレイからの下降気流が遺跡に与える潜在的影響を考慮」とあって、改めてこの機体の下降気流は相当大きいんだなということが分かりました。

 あの大きな機体をプロペラで持ち上げるわけですから、当然作用反作用の原理で機体分の重さの空気を下方に押しつけないと機体は持ち上がらないわけです。

 ハワイの遺跡は石造りだと思いますが、それに潜在的影響を与える恐れがあるような下降気流なら、日本の上空を長距離に渡って低空飛行訓練をすれば、その騒音や下降気流による被害は、ハワイの比ではないと思います。

 これまでは安全性がどうだという議論が先行し、もし日本のどこかに墜落したら、という意識でこの訓練飛行を見ていたような気がしますが、このハワイでの訓練飛行中止の理由を読んで、下降気流や騒音の問題もあるなと改めて感じました。

 防衛相は、「乗ってみて安全だった」とか、「事故はパイロットの操縦ミスが原因」という分析結果から、「機体は安全である」という訳の分からない結論を導き出そうとしているように思えますが、パイロットの操縦ミスも含めて安全かどうかという議論をしているのであって、最初に「安全である」という結論を得たいという意図が明白です。

 それに加えて、今回の下降気流と騒音の問題がどの程度のものなのかはっきりしてくれば、反対運動はますます大きくなるのではないでしょうか。

 日本の防衛、物資の補給のため必要だ、という議論は理解できなくもないのですが、そのために騒音と下降気流をまき散らして、日本のそれこそ国立公園を含むような地域で低空飛行訓練をするという暴挙はとても許せません。

 ちなみにハワイでの訓練は、空港周辺に限定しているように思えますが、それでも反対され中止を余儀なくされたわけです。

 日本の場合は予定されている低空飛行訓練ルートは、地図を見る限り全長3000km以上にも及ぶもので、北海道、関東、関西地区を除いて、ほぼ全域に達しています。

 以前も書きましたが、これは米軍が日本全体を訓練飛行場としてしか見ていないという明白な証拠のようにも思えます。日本の政府は安全保障の規定がある限り何も言えないだろう、ということを見透かされているような気もします。

 韓国に対して怒るのも結構ですが、オスプレイはまさに自分の頭の上をでかい機体がブンブン飛び回るのですから、国民生活を守る立場の政府なら、もう少し真剣に反対すべきだと思います。


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