買った株は上がったけれども

期待に応えて株価は上昇

 様々な株式投資指南書を読んでみると、投資の基本は「安いときに買って、高いときに売る」という単純な理屈があるだけでした。しかし安いときや高いときが、いつなのかは誰にも分からない、ということも分かって来ました。

 その結果、底を見極めるのは無理だから、適当なところで買いを入れ、天井を見極めるのは無理だから、ある程度上がったら売ってしまえ、という方法論が出てきます。

 この考え方ももちろん納得できるのですが、当然底から少し上昇したので買ったらすぐに下落した、とか、少し利益が出たので売ったら、そこから一気に上昇した、という現実に直面します。

 であるならば、その株の平均的な移動を考えて、その移動曲線から大きく下がったら買って、移動曲線を越えたら売ればいい、という方法も出てきます。

 しかしではその平均をどのくらいの日数で考えるのか、それとも何週間、何ヶ月間の長い期間で考えるのかということをきちんと理論立てて証明したものはなさそうで、一般的には13週平均とかを基準にしているようです。

 しかしこれとて、そのグラフを目安に買ったとしても、それよりさらに下がることはあるし、売ってから更に上昇することもあります。

 まあ素人がちょこっと考えたぐらいで先のことが予想できれば、誰もが大金持ちになっているはずですが、現実はほとんどの人が損をしているわけです。

 しかし、株を買うときには、自分だけはきっと儲かるに違いないという妙な錯覚に陥っています。当然私も買ったあとはうれしくて、毎日の株価欄を見るのが楽しみでした。

 というわけでその結果ですが、私が最初に買った株は、値動きは少ないものの、しばらくはじりじり上昇し、一時期は10%ぐらい上がりました。

 これを見て何と思ったのか。まあ思い上がりも甚だしいと思いますが、「やはり自分が選んだ銘柄は正しかった」という満足感です。

 ところが、いったん上がり出すと不思議なもので、今までは「ほんの少しでも儲かればいいや」という謙虚な気持ちだったのに、いつの間にか、「こんなに順調に上がっているんだから、これからも上がり続けるだろう」と勝手に予測をしてしまいます。

 10%上がった株は、20%ぐらい軽く行くだろうという感覚です。始めて買った株ですからしょうがないと思うのですが、上がるだろうという期待は持ち続ける原動力になります。

 そう思いこんでしまうと、もう後は先が見えてきます。上がり続ける中でちょこっと下がっても、「これは上昇基調の中の一過程に過ぎない」と思いこみ、さらにまたすぐ持ち直すだろう、と期待します。

 しかしまあ世の中そんなにうまくいきません。やがて株価はじわじわ下降していきます。


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