自分以外に多数の投資家がいる

自分だけが投資を行っているわけではない

 もう少し株価形成の要因に絡めながら、投資をする可能性について考えてみます。

 一般的には、株価の動きはその企業の業績変化を先取りすると言われています。従って投資する側は、本来ならその業種の経済界における役割や日本の社会における見通しを予測し、さらにその会社がどのようなことに力を入れて、会社の内情がどうなっているかを考え、将来の伸びを予測しなければなりません。

 しかし、それはその会社の役員にでもならなければ、なかなか見えてこないことです。

 そうなるとやはり頼りになるのは四季報株式雑誌の速報、さらにはネット環境からの噂話や口コミ等々を参考にすることになり、中には信憑性の希薄な情報も含まれることになります。

 それでも、そうやって自分で出来る限りの情報をかき集めて、「よし、この企業には将来性がある。しかも業績は伸びている。

 これなら間違いなく将来は安泰だ」と思える会社を見つけることが出来ても、実際にはそのような企業の株価はすでにかなりの高値になっていて、その先の高値を追うことは不可能のように見えます。

 つまり素人の判断で、将来性がある、と思えるような企業は、誰が見ても将来性があるわけです。しかし株初心者の頃の私は、自分自身の判断に酔いしれ、この企業は有望だ、この企業を発掘したのは自分だけだ、と思いこむような部分もありました。

 投資家の一人としての自負を感じる部分ですが、世の中には信じられないほどたくさんの投資家がいて、自分と同じか、または自分とは全く違う切り口で投資を行っている人がいっぱいいるということに、当時は全く気がついていませんでした。

 そして同じ数字を見ても、投資家の過去の売買歴や経験、そのときの感情で、その数字により今後株価は上昇する、と判断する人もいるし、下落すると判断する人もいるということに気が付いていませんでした。

  いわゆるマネー雑誌の記事に踊らされる、株式投資における、典型的なカモだったと思います。

 しかし典型的なカモだったとはいえ、投資金額そのものの桁が小さいため、損失額もそれほど大きくなく、損しても数ヶ月もすれば忘れてしまうようなものでした。

 一方、自分以外にプロやアマチュアを含んだ多数の投資家が存在するという認識は、投資対象銘柄を考慮する上で、常に意識しなければいけないということが徐々に分かってきました。

 よく株は美人投票に例えられ、多数の人が美人だと思う人の人気(株価)が上昇する、という説明がありますが、まさにその通りだなと思います。

 私自身がいくら良いと思っても、多数の人が関心を持たず、他にもっと良いと思える銘柄があれば、資金はそちらに集中し、私の買った株は見向きもされず低迷を続ける、ということになります。

 ということは、結局今上昇しつつあるように見える会社が人気のある会社であり、そこに投資すればいいのかというと、我々素人が「上昇している」と気がついた頃は、そろそろ上昇のピークになっていることが多く、またそのような銘柄が株の雑誌に取り上げられることがあり、結局高値をつかんで泣き寝入り、ということになります。

 また上昇しつつあるように見えるチャートが、本当の意味で人気が出て上昇したのか、それとも単なる確率的な「ゆらぎ」なのかということも、投資をする上で重要な判断材料であることが分かってきましたが、その区別は厳密には出来ないと考えています。


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