生徒指導経験の少ない管理職

学校の校長さんの発言が曖昧になる理由(2012.9.26)

 学校現場から50代のベテラン教員が減り(団塊の世代の大量退職)、20代から30代の若手正規教員も少子高齢化で減っています。

 増えているのは60歳以上の、いわゆる再任用と呼ばれる教員と、私のような非常勤講師、そして基本的に1年契約の臨時教員です。

 つまり一昔前に較べると、学校全体の教員数の中で正規教員のしめる割合がどんどん減っていると言うことです。しかし仕事は増える一方ですから、正規教員の仕事量はますます増え、過労や精神疾患で倒れる教員がいると言う構造です。

 一方これらの学校をとりまとめている教頭さんや校長さんですが、この方達は県からの様々な指示や報告業務で忙殺され、校内の様々な出来事まで気が回らないという現状があります。

 朝の始業時から帰りの就業時まで、ひたすら書類の整理と報告業務、教員の服務(出張や年休)に関する書類の整理で、コンピューターの前から片時も離れられないという状態です。

 しかも最近のこういった管理職の方々は、いじめ問題等の生徒指導に関する事に対して、失礼な言い方ですがあまり経験がないと言うことがはっきり分かります。

 これは現在の管理職試験のあり方にも問題があると思いますが、例えば23歳で無事教員になったとして、1校目で子供達を2回卒業させるのに、1年次から担任をやれば最低6年かかります。

 6年後無事栄転したとして、次の学校の1年目は副担任等をやり、2年目から1年次の担任となり3年間持ち上がり卒業させます。33歳になっています。次に1年ぐらい副担任等で過ごし、さらにもう1回担任をやりながら、例えば管理職指向の人は何らかの係分担の長になったりします。

 2校目は6年から10年前後経験する先生が多いのではないかと思いますが、3校目に異動するときは40歳前後です。この頃、有望と思われる人材や将来管理職を目指そうと考えている人は、勤務校の管理職とコンタクトをとったりします。

 3校目は将来の管理職を意識しながら、管理職のための実績を積む場になります。当然山積みになるような報告書類に対し的確に答えながら学校運営をするというのが管理職の仕事ですから、実績というと教務関係の仕事が主になります。

 またそうでない場合は進路指導とか学年主任という場合もありますが、いずれにしても何らかの長という係を分担し、生徒と直接対応するような場面は授業以外どんどん減っていきます。

 当然ながら、「いじめ」等の生徒指導よりも、県への報告書を如何に正確に書き、また自身の実績を強調することが職務になりがちです。

 あまり管理職批判をしてもしょうがないのですが、要するに担任として実際に個々の生徒と様々なやりとりをする中で、目の前の生徒がどのような気持ちを持って学校に来ているのか、ということをあまり実体験しないままに管理職になってしまう方が多いと言うことです。

 従って、いじめ問題が発生したとき、保護者への説明会を開いても、生徒や保護者の気持ちが分からない上に、県への報告という業務があるため、発言が曖昧になり、その結果「学校側は被害者の気持ちをまったく理解していくれない」という保護者の感想につながっているように思います。

   
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