国の目標は庶民の浪費?

GDP速報値がマイナスであるという現実を直視しないと(2015.8.20)

 17日に内閣府が発表したGDP速報値が話題になっています。フルタイムで働いていた現役時代は、GDPなんて自分にはまったく関係ないと思っていましたが、年金生活となって、あらためて物価の動き等を見ていると、この速報値はひじょうに重要な値なんだなということがよく分かってきました。

 それにしても、前期比で0.4%減という数字は、結構インパクトがあります。経済の減速が囁かれている中国ですが、その値は下落したとはいうものの7%という成長率です。

 確かに最高値は14%ぐらいあって、それが現在は7%ですから、減速という言葉は正しいのですが、日本の成長率と比べると比較にならないぐらい高率であるように思えます。ましてや日本の場合マイナスの値ですから、これこそまさに減速です。

 政府側は天候不順と言ったようなことが原因の一部と言っているようですが、本当のところは個人消費の減速であることは間違いなさそうです。

 今後も増税や値上げ、年金減額、社会保障費の負担増等、将来への不安があれば、誰もが節約志向に走るのは当たり前のような気もします。

 これに対して、政府は賃上げによる景気回復を目論んでいるようですが、中国経済が減速していると騒ぎ立てれば、企業もそう簡単に賃上げには踏み切れません。つまり今後給料が大幅に上昇するという見通しがもてないということです。

 一方で、国立競技場の建設費用の問題でも分かるように、施政者側は、国家予算が多額の借金を抱えていると分かっているのに、危なくなったら増税すればよいので予算は潤沢にある、と勝手に判断しているようで、節約意識はほとんど感じられません。

 一方で社会保障費が増えていると宣伝して、こういった費用は抑制しようという動きが鮮明です。また法人税を軽減する一方で、消費税を上げ、軽自動車の税金を挙げているわけですから、要するに大企業を優遇し、個人を冷遇するということです。

 そういった社会的な雰囲気を感じている賢い人たちが、できるだけ今使っているものを長く利用し、新しく買う場合も、ほとんど使わないような付加価値が付いた高機能製品を買うより、安くてシンプルな機能の製品を買えばよいという考えになるのは当たり前です。

 要するにネットの情報が飛び交う現在、あえて必要のないものは買わず、どうしても必要なものだけを買うという賢い消費者が増えているという側面もあるように思います。

 ということは、結局政府が考えている消費回復と言うのは、誰もが本来必要のないものまで買ってしまう浪費をしないと、到底達成できないような目標ではないかとも思えてしまいます。

 バブルの頃は誰もが背伸びをして、もう少しがんばればあれも買える、これも買えるという浪費期待があったのかもしれません。その意味では今の方が正しい経済循環といえそうで、本来そういった賢い消費者による消費によって生じた税金で国家の運営が行なわれなくてはいけないのに、相変わらず昔の方式で予算編成を行なっていることが、時代とずれているということなのだと思います。 


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