オリンピック出場選手にも体罰が

柔道女子暴力告発問題について(2013.1.31)

 学校現場での体罰が問題になり、調査を始めたらあちこちの学校で体罰が横行していることが判明。

 自分のこれまでの教員としての職業履歴を考えると恥ずかしい限りだと思っていましたが、今度は何とオリンピック出場の女子柔道選手に対して体罰が行われていたと言うことで、唖然としました。

 また、この体罰問題に関して自民党は、「いじめ防止対策基本法案」というのを検討しているようです。しかしこの中で自民党は体罰といじめを混同しているように思えます。私の頭の中では明らかに両者は別物なのですが、自民党案では

 『「何人も、児童らをいじめてはならない」と明記。いじめは小中学校の児童や生徒に対する「一定の人的関係にある者が行う心理的または物理的な攻撃で心身の苦痛を感じているもの」と定義し、インターネットによる中傷も含める。「一定の人的関係」とすることで、子ども同士だけでなく教師らによる子どもへの体罰も対象とした。』 (『』内引用)

 となっていて、これをそのまま解釈すると、教師の体罰は、生徒同士のいじめと何ら変わりないことになります。

 極論を言えば、教師が生徒を平手で殴ったり、今回の女子柔道の暴力行為の実例に示されている数々の暴行例も「いじめ」に過ぎないと言うことになります。

 自民党がこの案を考えたとき、教師と生徒、生徒と生徒という関係をどのように考えて作ったのかよく分かりませんが、立場の違いというのがほとんど考慮されず、さらに教師の体罰を「いじめ」であると軽減しているようにすら思えます。

 私は文化系の人間なので、どちらかというと縦社会の人間関係を重視する世界とは無縁の生活を送ってきましたし、またそうゆう世界とは関わりたくないとも思っていました。

 先輩の命令には絶対服従。反論は許されない。いつぞや自衛隊や警察の中でもこういったいじめというか体罰というかが明るみに出て問題になりましたが、これらはすべて傷害事件として扱われたと思っています。

 そう考えると、学校における体罰も、柔道界における体罰も、傷害事件として分類される犯罪行為であり、決して「いじめ」という定義にはならないように思います。

 それにしても、今回の女子柔道の体罰に対するJOCの処分は甘すぎる、というのが一般的な見解ではないでしょうか。会長さんの会見には、学校の校長や教育委員会の隠蔽体質と似たような言い逃れを感じます。

 それにしても、なんでこんなに体罰が多いのか。指導者側に、「口で言って分からなければ体で教えてやる」という傲りがあり、それを見ても成績さえ残せばいいんだと考える指導者の上に立つ管理者がいる、という構造です。

 かつて私は、パワハラとも思えるような校長の下で仕事をしたことがありますが、あの人は教員時代に生徒に体罰を与えて県から指導を受けているという話を聞いて、なるほどこうゆう人は管理職になってもなかなかその性向は治らないんだなと感じました。

 つまり、指導者側を管理する校長やJOCの役員さん達の中にも、かつて体罰を行ってきた経験のある人がいて、その人達が「まあこのくらいなら、それなりの記録を出しているんだから許せるんじゃないのか」と内心思ってしまい、体罰を行っていると聞いても指導が甘くなってしまうのではないかなと思えてしょうがないです。

 また保護者の中にも「体に言い聞かせて鍛えてくれ」と学校側に要請するような人もいますから(面談で実際に何人もの保護者から言われた経験があります)、問題は根深いと思います。
  
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