健康寿命を限界まで伸ばす

10年後、20年後の高齢者を取り巻く医療環境(2015.6.15)

 地方創生の一貫なのか、高齢になったら田舎に帰ったほうが医療が整っていますよという研究結果?が披露されましたが、やはり「本当かな?」という気がします。

 私の本当の生まれは石川県の能登半島の中央あたり。両親が帰郷して私を生んだということのようで、私が高校生ぐらいになるまでは祖父祖母も健在で、夏には先祖の墓参りを兼ねて帰省していました。

 当然ながら北陸新幹線が出来る前で、ともかく金沢まで行くのが1日がかり。そこから先、さらに能登半島に行くために七尾線に乗り、さらに最寄り駅から田舎の家まで10kmぐらい離れていたのでタクシー。

 その後私も車の免許をとり、能登半島観光を兼ねて夏休みにはよく帰郷しましたが、最初の頃は関越道も前橋あたりまでしか出来ておらず、そのまま山越えをして、なんとか上越あたりで1泊。さらに金沢で2泊してようやく田舎の墓参りというのが実態でした。

 幸いなことにその後高速道路がどんどん整備され、無理すれば1日で富山あたりまで行くことも出来るようになりましたが、遠いなあというのが実感です。

 そこへ北陸新幹線が開通しましたので、一気に北陸ブームとなり、石川県の観光業は潤っているのだと思います。兼六園を初めとする能登半島の美しい景色は素晴らしく、また各種の海産物が豊富で、和食好きにはたまらない場所だと思います。

 しかし「そんなに良いなら田舎に帰って生活したら」と言われて、都会で60年過ごした私が戻れるか?駅から10kmも離れた場所で、(すでに家はありませんが)車だけを頼りに、最寄のスーパーまで5km、病院まで10km、といった場所で生活できるのか?

 冒頭の「地方には医療設備が整っている」というのは、単に人口が少ないから、相対的に病院が多いということを言っているだけで、交通の不便さや生活の不便さは考慮されていないように思います。

 また今でも不便な生活を強いられている、現に地方に住んでいる方が、これ以上都会の人が来て人口が増えたら、自らの医療機会が減る可能性があると書いている記事を見つけましたが、そういった反論もうなづけるなと思います。

 一方、10年後、20年後、今私が住んでいる首都圏近郊都市の医療体制はどうなっているのか?我が家の近くにある民間病院は、私がこの地に引っ越してきた35年以上前から診療を続けていますが、5年刻みぐらいで大きな病院に膨れ上がり続けています。

 それでも患者数増に対応できないのか、朝予約して、午前中の終わりにようやく診療。その後お昼過ぎに会計を済ませて、午後にようやく病院近くの薬局で薬をもらえるという診療体制のようです。

 この地域の人には信頼があるせいだと思いますが、たまに私も息子や母親の関係で利用する機会がありますが、当たり前ですが待合室はほぼ満席で、その人たちの7割以上は高齢者です。

 これがやがて8割、9割になるのだろうなと思いますが、当然ながら入院している高齢者も多いはずですから、医療を受ける機会が減ることは間違いなさそうです。

 その意味では、地方へ行った方がという言葉は説得力があるかもしれません。しかしあえて交通網の発達した住み慣れた街から、交通が不便な街に移動する気が起きるかと思えば、先ず無理だろうな、と思えます。

 だとすれば、結論は一つ。自宅でそのまま最後を迎えたい。そのためにも健康寿命を限界まで延ばすことが大事なんだろうなと思っていますが、果たしてどうなることやら。


表紙に戻る 老後の健康 20年後のベッド数