平均寿命、平均余命、健康寿命から
繰り上げ受給を考える

老齢年金の繰り上げ受給は得か?(2012.6.27)

 老齢年金の繰り上げ支給について考えていますが、いまどき早めにもらったら1年間で6%も減額される、なんて言うのは横暴きわまりない措置のように思えますが、損益分岐が76歳以降に設定されて逆算すると6%になるということなのかもしれません。

 ではこの76歳という年齢にどのような意味があるのかというと、例えば平成21年度の「平均寿命」は男が79.59歳、女が86.44歳となっていて、繰上支給を選択すると損になることが明らかです。

 また「平均余命」という考え方もあり、これは現時点の年齢で平均何歳まで生き延びられるかという数値です。これが60歳時点で男性は約23年となっていますから83歳、女性は約28年ですから88歳という数字になり、これまたさらに損することになります。

 ちなみに平均寿命というのは、上記平均余命の0歳児の平均寿命のことです。年齢が上がれば上がるほど、当然ながら、更に長く生きながらえる確率が上昇すると言うことです。

 ところで寿命の考え方にはもう一つ種類があって、それは「健康寿命」と言われているものです。これは最近注目を浴びつつある概念ですが、要するに介護を必要とする以前の、自分だけで自立した生活を送ることが出来る平均年齢の事です。

 これが厚労省の発表では、2010年の統計で男性は70.42歳、女性は73.62歳となっていて、2004年のWHOの発表では男性72.3歳、女性77.7歳、全体で75.0歳だそうです。

 昨日の年金の繰り上げ支給で、5年繰上で75または76歳あたりが、この数値を意識しているのかどうかは分かりませんが、ちょうとぴったり一致しています。

 つまり5年繰上をすると、健康寿命の間は多くもらえて、それを過ぎて長生きすると損をする、という言い方に変わります。

 そう考えると、それなら体の動く元気な間に寄りたくさんの年金をもらって楽しんだ方が良い(月5〜6万では楽しめることにも限界がありますが)と考える人もいるでしょうし、いやいや健康寿命が終わったあと、介護の問題が生じたらそこでたくさんのお金が必要だから、やはり繰上支給はしない方が良い、と考える人もいると思います。

 さてどちらが良いのかは、もちろん個々人の年金以外の資産の保有状況にもよると思いますが、私の場合は来年の3月までにその結論をだしておかないといけないわけで、結構悩ましいなと思っています。

 ちなみに繰り上げ支給を受給している人が現在どのくらいいるかということですが、2009年度調査で、なんと44%の人が繰上でもらっているみたいです。一方繰り下げてもらっている人は1%だと言いますから、やはりそれだけ日々の生活が苦しくなっているのではと思えます。

 繰上か通常かを選択する経済的な余裕はなく、繰り上げてもらわないと生活できない、と言う人が増えているのだと思います。大変な世の中です。


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