綱は見えても、引いている人は見えない

多数の投資家の思惑による綱引き

 多数の投資家が、それも私のような初心者から、いわゆる投資信託を運用するようなプロまでが投資を行っていると言う事実は、裏を返すと、一つの銘柄に対する見方が多種多様であると言うことを意味しています。

 それこそ単にその会社に関連した企業に勤めているから買った方がよいだろう、みたいな考えから、業績やチャート、会社の内部事情まで分かる範囲すべてを検討し、購入している人もいるということです。

 そのような多数の人たちの思惑が入り乱れて、今目の前の株価の動きを形作っているわけです。しかも同じチャートを見ていても、ある人はこの先上がると判断して買いを入れるし、ある人はこの先下がると判断して持ち株を売ることがあります。

 同じ業績の変化を見ていても、ある人はこの先も上昇基調だろうと判断し、ある人はそろそろ業績も頭打ちだろうと判断します。

 結局何か一つの指標を見ても、必ず相反する二つの見方があり、さらにその指標すら、ある人はチャート、ある人は業績、ある人はROE、ある人は会社を構成する人の数、ある人は有利子負債、ある人はバックアップしている銀行などなど様々な指標があります。

 そこまで気がついてしまうと、いったい何を基準にして投資をすればいいのかという投資の原点に戻ってまたまた迷うことになりますが、結果的には、自分だけの投資方針(指標)を研究しなければいけないということになるようです

 このような株価の形成は、よく綱引きに例えられます。とてつもなく長いロープがあって、その両側にほぼ力が拮抗する多数の人たちが群がって綱引きをしているわけです。

 その巨大な綱引きを外から見て、なんだかこっちには巨漢が多いから右に行きそうだとか、新たに加わった手伝いの人たちが力強うそうだから左に行きそうだとか、今こっちに中心が動き出したからこのままずるずる引っ張られるのではないか、と予想して、よし「右に行きそうだから買いだ」とか「こりゃやっぱり左だから売りしかないな」と判断しているのが、短期でも儲けようと考えている投資家の姿かなと思っています。

 しかし1企業の株価の売買に携わっている人たちは膨大な数であり、綱引きで言えば、遠くの方で綱を引いている人たちの姿まで見ることが出来ないので、中心付近で必死になってロープを引っ張っているごく一部の人たちの様子で、その後の予想をするしかないというのが、素人の株投資の判断になります。

 そう考えると現在の株価がその後上がるか下がるかということを客観的に予想するのはほぼ不可能であると断言せざるを得ません。

 ただしこの考え方には時間の要素が入っていないので、長期的に見たらどうかとか、今この瞬間に動いている株価がその後どちらに進みそうか、ということはごく短い時間の予想なら、コンピューターを駆使すれば可能かもしれないな、と思えるような気もします。

 また長期的に見れば、資本主義の世の中では基本的に企業の株は、その企業が順調に営業を続けていられる限り少しずつ上がっていくと考えるのが順当ですので、長期的には上がる、と言えるのかも知れません。

 そういったことを考えの根底にして、長期投資が良いと考える投資家の方も多いように思います。しかしではどのくらい長期化となると、これは誰にも分かりません。

 一方短期の場合は、目先の動きと買いと売りの板を見て、もしかしたら予想が可能ではないかと考える人たちが、いわゆるデイトレードを行っているのだろうと推測しています。


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