「ボクは自由です」に感銘を受けました

宮崎駿監督の引退会見で感じたこと(2013.9.7)

 宮崎駿監督が引退会見を行い、「編アニメは作らない」と宣言したそうです。ということは短編ならまだ作る意欲はある、と言うことだと思います。是非今後も素晴らしい作品を作っていただきたい物です。

 我が家の息子は、ちょうど3歳か4歳の頃、たまたま借りてきた「トトロ」のDVDにはまりこんで、黙っていると何回でも繰り返して見ていました。

 大人なら数回見れば筋書きも分かり飽きてしまう部分もあると思うのですが、息子の場合はレンタル時期の締め切りが来ても、「まだ見たい」と言います。結局飛び飛びですが「トトロ」だけで、3〜4回借り続けた記憶があります。

 大人にとってはある意味夢物語の馬鹿馬鹿しい話にも思えてしまうわけですが、子供にとっては、何か感性に響くものがあるようで、そういった子供の感性を揺さぶる作品を作ることが出来るんだから「スゴイ人」だなと思っていました。

 つい最近息子に「お前、小さい頃トトロばっかり見ていたけど覚えているか?」と聞くと、「覚えている」と言います。そこで「何がそんなに良かったんだ」と聞いてみたのですが、やはり当時の気持ちは細かく覚えていないみたいでした。

 ただ、「ネコバスの動きとか〜」なんて言っていましたので、トトロも含めて、ああいった通常の凡人には発想できないキャラが、子供の感性に訴えかけるものがあったんだろうな、と感じました。

 その宮崎駿さんが引退会見で「かつては1日12時間机に向かっていたが、今回は7時間。限界ギリギリ。加齢はどうしようもない」と言われていたので、先ず最初に「12時間も机に向かっていたんだ」という集中力に驚くと共に、やはり加齢には勝てない、と言うのが厳しい現実だなと思わされました。

 私は物理の教員を30数年間やっていますが、ここ2〜3年で、暗算の計算力がかなり落ちてきたなと感じています。かつては3桁ぐらいの引き算が簡単にできたのに、何だか考えている内にこんがらかることが増えています。

 当然ながら物理の問題を解く時間も、若いときより時間がかかるようになっていて、今年はまだ非常勤講師をやっていますが、来年あたりは厳しいなと感じています。

 こういったことは、教員の世界では当たり前のように存在していますが、一番最初に限界を感じるのは体育の先生ではないだろうかと想像しています。これはスポーツ選手を見れば一目瞭然で、一部の人を除いて、大半の方は40代ぐらいで第一線を退かざるを得ないように見えます。

 その次が数学や物理と言った理系かなと言う気がしているのですがどうでしょうか?数学や物理とはちょっと違うかもしれませんが、囲碁や将棋の世界でも、若い方は読みが早くて広く深い、と言う記述をよく目にします。

 50歳を越えてなお一線で活躍している方は、それまでの読みに、人生経験という深みを加えて頑張っているのかなと思っていますが、さすがに70歳でトーナメント第一線の現役という棋士はいないように思います。

 というわけで私のような凡人ですら、計算力に限界を感じるわけですから、天才の宮崎駿さんが72歳で限界を感じていると言うことは、残念だけどやむを得ないのかなと思わざるを得ません。

 ただ「ボクは自由です」という引退会見の最後の言葉は、今の私の心境にも通じるところがあり、ちょっと嬉しくなりました。
 
   
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