対策の要は早期発見、早期対策

どんな学校にもいじめは存在します(2012.9.19)

 最近のいじめの報道を見ていると、「それはちょっと違うんじゃない」と思えるようなことが多く、現実に教育現場にいて30数年間教壇に立ってきた一人として、学校の現状を少しまとめてみるのも良いのかなと思うようになってきました。

 というのも、テレビや新聞のコメンテーターまたは解説者の記事を読んでいると、もちろん教育委員会や個々の学校の教育体制に不備があることは充分分かるのですが、今ひとつ現場の実情がわかっていないままにコメントをしている方が多いように思われるからです。

 その辺りの歯がゆさみたいなものを少しまとめてみたいなと考えました。ちなみに私が担任していたクラスでも、いじめが起きかかったことが何回かあります。いずれも早期発見、関係する教員への早期連絡と協力(情報交換)のもとに関係者への早期指導が効を奏して大事には至っていません。

 まずいじめの根本ですが、いじめの定義にもよりますが、どんな学校でも「からかい」程度の事は日常的に起きていると思って間違いありません。進学校や指導困難校に限りません。(両方の学校で経験があります)

 ただし進学校は分かりにくいです。また極端ないじめにまで発展することは少ないように思います。それはこれらの生徒が、「これ以上やったら生徒指導上問題になる」と自分で判断し自制できるからだと思います。

 またからかいやいじめを受けた側も保護者がしっかりしていて、その子供の悩みを真摯に受け止めたりすることが出来るので、受けた側の心理的負担も少ないように思います。

 その結果、こういった学校で起きる「いじめ」の代表例は、暴力的なものではなく「無視する」ということです。これは女子の間で特に起こりやすいように思えますが、学校の中でのグループを作るときに意図的にさりげなくその子を仲間に入れない、という方法です。

 「なんとなく孤立しちゃったな」という雰囲気を教員側が察知できれば、もともと力のある子達ですから、教員が間にあってさりげなく説得または指導することによって、多くは解決します。

 どうにもならないときは、担任から見て信用のおけそうなグループの子達に、「彼女にちょっと気を使って欲しいんだけど」、と伝えると、それだけで生徒同士で解決することもあります。

 要するに担任は生徒の動向を知っていて、さりげなく見ているよ、という姿勢が生徒に伝われば、進学校では自浄作用が働き、生徒同士で解決する場合が多いと言うことです。 (ただし担任が普段からいい加減に生徒と接していると、生徒は担任の言うことを信頼しない場合もあります)

 ところが指導困難校と言われる学校では、もともと生徒同士のコミュニケーションの力があまりないので、ほんの些細なことがからかいやいじめのきっかけになります。

 特にこの子達は、思春期に入ると、自分に自信が持てないため(授業でいつも落ちこぼれていたためかもしれませんが)、外見の違いをひじょうに気にします。

 「太っている」「やせている」という単純な外見もそうですが、それよりももっと個性的な部分に注目することが多いです。例えば「しゃべり方が変だ」「食べ方がおかしい」「鉛筆の持ち方が変だ」等々、例を挙げればキリがありません。

 そういった見かけ上の違いを強調することによって、自分たちの潜在的な精神的安定や優越感を保とうとしているのかもしれませんが、対象になった子の心理負担は想像を絶するものがあると思います。 
   
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