いじめ対策は時間を要します

校内の「いじめ」指導の流れ(2012.9.20)

 いじめの中身の違いはどうあれ、進学校だろうが困難校だろうが、常にからかいやいじめが起きる可能性はあります。

 それに対して学校または教員はどのような対応をとっているのか、ないしはどのような対応をとれるのか?一般の方にはなかなか動きが見えないと思います。

 文科省あたりからは、いじめ問題が起きるたびに、学校にはA4の紙の通知が来たりしますが、その内容は基本的に早期発見に努め、学校全体で早期対応をする、という二点に集約されるような気がします。

 また、いじめ防止啓発パンフレット等を作り、それを全生徒に配布することもありますが、現場の感覚からすると、「これを配ってもなあ〜」とか「配っても読まないよなあ」という感想を持ちます。

 さらに、「この学校の生徒の学力では、この文章は読めないよなあ」、「またゴミが増えちゃった」という空しい雰囲気も感じます。

 この辺りすべての学校を対象にして、例え10ページ前後のパンフレットを作ったとしても、それはあくまで代表的な事例にならざるを得ず、あまり利用価値がないなあと感じてしまいます。

 これを作る予算があったら、現場に一人でも多くの教員を配置した方が良いのではと思うこともあります。

 また各種の教職員研修会でもいじめ問題は結構頻繁に取り上げられますが、頭では理解できるものの、実際のいじめに対する対応というのは、その場その場で流動的であり、それこそ臨機応変に対応する必要があります。

 そのノウハウというのは現場でベテラン教員と共に行動することによって培われるのかなとも思っています。

 それはそれとして、一般的ないじめに対する指導の流れは以下のようなものです。

 いじめ発生(実際に見た、または報告があった) → 担任または発見者から状況を学年や生徒指導部に報告 → 担任や学年所属の先生が、被害者から事情聴取 → 同様に加害者から事情聴取 → 養護教諭等との連携 → 被害者・加害者双方の保護者への連絡 → いじめの状況、対応状況を管理職報告 → 同時に学年会議や生徒指導部会開催 → 管理職は上部機関に報告 → 学年会議・生徒指導部会議で今後の指導方針を協議 → 職員会議等で指導方針を報告し了承 → 該当生徒の保護者に指導方針を報告 → 全職員の協力体制を確立 → 該当生徒への指導、という流れになるのですが、読んでもらえばすぐ分かるように、流れはいくつも分岐があり、また発生から指導までかなりの日数を要します。

 当然この間にさらなるいじめが起きる可能性もあり、その間該当生徒の担任は加害者に対して「これ以上は何もするな」という指導を行うわけですが、それが素直に聞き入れられるようなら、深刻ないじめはそもそも起きていないようにも思います。

 また、このあたりになってくると、教員と生徒間の日頃の信頼関係という言葉が重要な意味を持ってきます。
 
 以上のようなややこしい面倒な手続きがありますから、一般的に担任の潜在意識の中には「出来れば自分のクラスで、いじめ問題は起きて欲しくないな」と思うようになります。

 思うだけなら良いのですが、実際にいじめらしきことが目の前で行われているとき、このような潜在意識が強く働いていると、あれは「いじめ」ではなくて「からかい」だ、と判断したりします。

 そう思ってしまえば、特に学年や生徒指導部に報告する必要はないので、ある意味表面上は気楽です。

 しかし生徒側からすれば、あの担任は「いじめ」を見ないふりをしている、ということになります。一度そう思ってしまうと、生徒は「あの担任に訴えてもしょうがない」と判断します。

 そんな状態で、ある日、本格的ないじめが始まったらどうなるか?生徒は誰に救いを求めたらいいのか?

  
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