人は楽して儲ける仕事をしたがる?

少子高齢化と産業構造の変化で日本は動脈硬化?(2014.7.28)

  私が中学、高校時代に社会の授業で、日本の産業構造という分野の説明があって、多くの人がきつい肉体労働を伴う農林漁業を離れて、都会でサラリーマンとして働くことを夢見ているというような話を聞いたことがあります。

 実際教科書にはグラフが載っていて、第一次産業従事者が減り、第二次産業と第三次産業従事者が増えていることが示され、さらにそれによって都会に人が集中するという話だったと記憶しています。

 あらためて調べてみたら、統計局にグラフが出ていました。昭和40年の頃の第一次産業従事者数の比率は、全体の25%弱で1015万人。それが平成17年には5.1%まで落ち込み、人数は315万人。

 この間に第2次産業と呼ばれている鉱業、建設業、製造業もじわじわ減少。31.5%から25.9%になっています。ということは第一次産業も第二次産業も減少し、第3次産業のみが増加していると言うことです。

 この比率は昭和40年にすでに44%近くになっていて、平成17年は67.3%です。従って労働者の3分の2は第3次産業に従事しているというのが現代社会の産業構造のようです。

 この数字を主要先進国と比較した表も出ていますが、比率だけで見ると、日本の第一次産業従事者の5.1%はイタリアの4.9%を抜いて第一位。以下フランス4.0%、カナダ2.6%、ドイツ2.3%、アメリカ1.6%、イギリス1.2%となっています。

 日本は草食系の農耕民族なんだなという気もしますが、地方都市の崩壊なんていう話を聞くと、今後この比率はさらに減少することは間違いなさそうです。

 では平成12年から17年にかけての産業別の増減はどうか。著しく減っているのが鉱業分野。次が林業。さらに漁業、建設業と続きますが、驚いたのがその先の金融・保険業、製造業という分野です。

 特に製造業は工場がどんどん海外移転をしている上にロボットなどの技術が進み人が減っているということは分かっていましたが、5年間で人数が1割以上減っています。

 では増えた分野はどこか?これはもうダントツで医療福祉分野です。少子高齢化が進んでいるので、こうなるのは当然のようにも思えますが、本来国の利益を生み出すはずの製造業の従事者数が減り、どちらかというと支出のみがかさむ医療・福祉従事者数が伸びていると言うことは、産業構造の面から見ても日本の将来が危ないように見えてしまいます。

 今日、この内容で記事を書こうと思ったきっかけは、毎日新聞の見出しで「人件費高騰でインフレ」、「低価格ビジネス崩壊」という見出しがあったからですが、ともかく産業界の人手不足が深刻だということのようです。

 もともと農林水産業の肉体労働のつらさから第3次産業が増えたわけですが、いまやその第3次産業の中でも、体を動かして働くような製造業関係者が減っているということでしょうか(福祉関係は該当しないかもしれませんが)

 自分さえ楽して生きていければよいと思うのは、誰もが願うことだと思いますが、そう思う人の割合が増えていくことによって産業が衰退し、人手不足が深刻になり、サービスが低下、それが物価高に影響を及ぼし、さらに社会保障に影響するという悪循環が少しずつ始まっているような気がします。

 しかし対策は難しい。道路工事の現場を見ると、私と同じ年代と思われるような方が多数働いていますが、20代と思われる若者の姿はほとんど見ません。今は団塊の世代から我々の世代が、まだ少し働ける余地がありますが、その先の建設現場はどうなるのか?

 日本全体が徐々に動脈硬化症状を呈していくように見えて、不安になります。


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