全員が得をする選択肢はない!

日本の消費は今後もどんどん減少するはず(2016.7.2)

 7月2日の毎日新聞朝刊の経済観測と言うコラムに、ベトナム簿記普及推進協議会理事長の大武さんと言う方が、「まったくその通りだ」と思えるコラムを書いています。

 題名は「消費伸びぬ背景に働く人激減」というもので、安倍政権は盛んに失業率の改善をアピールしていますが、この文面では、団塊の世代の大量退職に伴って、必然的に働ける人の人数が減少して、一方で若者が減っているので、失業率が減るのは当然と書かれています。

 つまり失業率が改善されているのは、人口動態が原因であって、アベノミクスの効果ではない可能性があるということです。

 実際に記事には具体的数値も書かれていて、昨年は200万人以上が65歳以上となって退職した可能性があるのに対して、新たに就職する若者の労働人口は100万人ぐらいしか増えていないということです。その差100万人が失業率を下げているという論法で、私はこの考え方の方が現実にあっているように思えます。

 ちなみに現在の日本の労働人口は6446万人だそうです。このうち正規労働者が3376万人で昨年比45万人増、非正規労働者は1990万人で41万人の増加。

 この増加した人数を見るとアベノミクスの効果はあったということなのかもしれませんが、内容を見ると圧倒的に派遣労働が増えていますから、実質賃金は全体として頭打ちになってしまいます。

 では頼みの高齢者の消費はどうかと言えば、一部の富裕層を除いて、今後年金が減る可能性があるとか、先端医療で金がかかりそうだとか、長寿によるリスクとか、まあ心配事は多数あります。

 そう思うと、すでに足りている衣料品を新たに買い増す必要はなく、電気製品も壊れたものを買い替える程度でいいかなと考えてしまいます。さらに加齢によって足腰が弱くなれば外食は減り、近所のスーパーやコンビニで数百円の弁当を買って過ごすという機会も多くなります。

 その結果さらに消費は減りますので、高齢者の需要喚起と言っても限度があります。あえて言えば、健康関連の食品や運動器具はそれなりの需要があるかもしれません。

 (私が唯一毎週見ている笑点では、やたら紙パンツの広告が増えています)

 というわけで、若者は派遣労働で金がなく、中年は子育ての教育費で金がなく、高齢者は将来への不安で金を使わずという構図が出来上がり、いくらコマーシャルを流してもなかなか消費は増えないということになりそうです。

 その結果、税金収入は増えませんが、社会保障費は今後もやたら多く必要になるということが分かっていますので、もしかしたら年金が削られるのではという不安が若い人の中に芽生え、さらに消費が落ち込むという悪循環です。

 しかしそれが分かっていても、目先に選挙がちらつくと、つい現実で楽をする、例えば消費税延期のような選択をせざるを得ない、ということで、これによってますます負の悪循環が強まるということになりそうです。

 この循環を断ち切るには、どこかに大きな痛みを背負い込ませつつ、支出を極端に減らすという大胆な発想の転換が必要なんだろうなと思いますが、そういった具体的な発言は、今回の参議院選挙でもあまり聞こえてこないような気がします。


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