設備投資ではなく人材に投資を

給料を上げて経済効果を生み出す(2012.11.13)

 今日の新聞の経済面に、日銀の白川総裁のインフレ目標に対する見解が書かれていて、「さすが日銀、ちゃんと情勢を客観的に把握しているな」と思いました。

 記事の見出しは『インフレ目標「非現実的」』、日銀総裁「賃金引き上げ不可欠」というもので、日銀がインフレターゲットを設定すべきだという意見に対し、「物価も賃金も上がらない状況が長く続いた日本経済では現実的ではない」と否定的なコメントを出した、というものです。

 私は経済については無知なのでよく分からないことが多いのですが、日銀がいくら物価上昇1%を叫んで貸し出すお金を増やしたとしても、現状ではそのお金を使って何かを作っても売れないわけで、それが分かっているから企業としてはわざわざ金を借りてまで設備投資をする必要はない、ということになるのかなと思えます。

 ややこしい経済の話を私なりに簡単に解釈しているわけですが、要するに「不況、不況」と叫ばれ、「老後の不安」が蔓延し、今後も昇給が予想できないような社会では、余裕資金が少しでもあったら、それは浪費するのではなく節約して貯金しようと、ほとんどの人が考えるはずです。

 したがって生活必需品である、衣食住に関するものは売れても、それ以外の贅沢品や浪費物にお金は向かいません。

 しかもそれに輪を掛けるように少子高齢化が進み、テレビでは高齢者の購買意欲を如何にかき立てるか、なんていう番組も放映されています。

 しかしこれから高齢者になる私の感覚からすると、年金の額は高が知れていますし、貯蓄額も10年20年先の将来を見ると、本当に持ちこたえるのかなと言う不安が先に立ちます。

 従って、あえて現在の生活状況以上に、何かを買い換えてより便利な暮らしをしよう、という欲求は生まれてきません。これ以上物を買って家の中を狭くしてどうするんだと思っています。

 ということは、いくら高齢者の購買意欲をかき立てようとしても、それにも限界があります。一方若い人たちには非正規雇用が今後も増えていきそうですから、将来への年金不安も考慮すると、車なんかとても買えない、唯一の贅沢品がスマートフォンやアイフォンなのかなという気がします。

 要するに物が売れない環境の中で、インフレターゲット1%を叫んで、市場にいくらお金をつぎ込んでも、そのお金は国債購入等に向かうだけで、消費を刺激する事はないということです。

 で白川総裁のコメントですが、ある程度物価が上昇するためには(デフレ脱却のためと書かれていますが)、「経済成長力を強化し賃金の引き上げを実現すること」が必要であり、そのためには「思い切った規制緩和など、政府の役割も大きい」としています。

 大変単純な考えですが、賃金が毎年上がるということが分かってくれば、購買意欲は自然に増加し、それによって経済が動き出すというように私は思っているのですが、そんなことをしたら会社がつぶれる、と思っている経営者がやはり多いのでしょうか。

 しかし中小零細企業ならともかく、大企業の場合は、企業の会計の中に含まれる人件費の割合はかなり少ないように思います。そう思ったのは、東電の再建計画で、人件費(給料)を減らしても、それほど電気料金値上げ(値下げ?)には影響しないという説明があったからです。

 つまり逆に言えば、大企業の資産の中で、人件費のしめる割合はそれほど大きくないと言うことで、だったら昇給があっても良いのではとか、非正規雇用ではなく正規雇用を増やしても良いのではと思えます。


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