先が見えない不安

シニアがお金を消費したくなる社会環境(2015.10.3)

 自分が元気で動き回れる時間を健康寿命と想定すると、私の場合は後8年。その間をより充実した人生にするために、ある程度の支出が必要かもしれないなと考えていたら、いろいろとそれまでに欲しい物が出てきました。

 一方私の母親は現在85歳で、認知症にもならず、実家でゆるゆると暮らしていますが、さすがに出歩くことはほとんどなくなりました。

 そう思って最近母親が今の私の年齢だったとき、どんな感じだったかを、パソコンに保存した国内旅行の写真で確認してみると、車に乗って一緒にあちこち行って温泉に入り、美味しいものを食べています。

 つまり私の現在の状況とよく似ているということです。ところが、私が52歳ぐらいになった今から10年ぐらい前の旅行あたりから、急激に一緒に出かける旅行頻度が減少しました。

 当時の母親の年齢は75歳。旅行先の観光地に行っても、辛いから歩きたくないというような場所が増えました。ということは女性の方が健康寿命が長いことを考えると、やはり私の場合もせいぜいが72歳あたりで旅行頻度が下がってきそうです。

 そして今から5年ぐらい前、すなわち母親の年齢が80歳になった頃から、旅行に行くこと自体が不安だと言うようになりました。つまり旅行の疲れがいつもでも残ってしまって、体調が悪くなるということのようです。

 その後はひたすら家の周辺を動き回るだけの生活になってしまいました。ということは私自身が体力を温存し、今後様々な健康法を試みたにせよ、75歳ぐらいになると、旅行に出かけること自体がしんどくなるように予想できます。

 そんなわけで、今は旅行を例に出しましたが、母親の様子を見ていると、うまくいっても私が元気に遊び呆けていられるのは後10年ぐらいのように思えます。

 だとすると、物持ちの良い私としては元気なうちに少し高価なものを買って、それを存分に楽しむような人生にしたいなと思ってしまいます。

 そうやって、「今欲しいな」と思うものの項目と金額をリストアップして行くと、車:200万、フルート:80万、クロスバイク:5万といったあたりがささやかな?希望。要するに300万ぐらい。

 一方あと10年ぐらい、年金+ネットの副収入で毎年海外旅行に行き続けると、年間50万円ぐらいの赤字になりそうなので、500万円資産が目減りしそうです。

 さらに今後の10年で家電製品の買い替えや家のリフォームが必要になるかも知れず、現時点で合計今後資産が1000万程度目減りしそうです。

 最後を迎える頃に資産がほとんどなくなっても、息子にはこの家が残りますのでそれで良いかなとは思っていますが、心配なのは今後の物価の値上がりと社会保障費の増加、税金の増加、私自身の医療費、そして年金減額の行方です。

 このあたり真剣に考えると、すぐに買い換えたいのに将来が不安で買えないというのが、割りと標準的なシニアの家計の悩みかなという気もします。

 というわけで、こんな不安を常に抱えるような老後が待ち構えている限り、シニアの購買意欲は今後も衰退するでしょうから、年寄りは何も買わず、日本の経済はちっとも好転しないという結果になるような気がします。 

  
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